2.実際の食べさせ方と飲ませ方 基本的には口唇閉鎖能力を高めていくことが中心になります。食物を取りこんでから嚥下するまでの過程は実際には一連の動きですが、ここでは便宜上、捕食(口唇を使って食物を取りこむ)時、食物処理(咀嚼や押しつぶしあるいは吸啜動作など口の中で食物を処理する)時、嚥下時の3つのステップに分けて考えてみることにします。
最初は捕食時に口唇を使って食物を取りこむことを練習し、次に嚥下時に確実に口唇を閉じられるようにし、最後に食物処理時にも口唇を閉じていられるように練習します。ここでは固形食について、訓練をみて行きます。
1.固形食用のスプーン



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スプーンを使った訓練は、主として初期〜中期段階の子どもを対象にしますが、後期段階の場合にももちろん使えます。
A.スプーンに食物をのせる時
器からスプーンに食物をのせる時には、スプーン全体に山盛りに乗せるのではなく、スプーンの先のほうにこんもりと載せます。こうしたほうがスプーンをあまり口の奥に入れずにすむし、また口唇で食物を取りこみやすいのです。
スプーンを子どもの口に運ぶ時には、子どもの口の高さと同じか、それよりも低い位置から水平にもっていくことが大切です。通常、食事の介助をする場合には、介助者の目のほうが子どもの目より高い位置にあるため、どうしても上方からスプーンをもってくるようになり、その結果、子どもは頭を後方にそり返らせてしまいます。また、後方から介助しているような場合、介助者は子どもの口の中を見ようとして、つい子どもの頭を後方に反り返らせてしまうこともあるので注意します。
スプーンを子どもの見える位置まで進んだら、そこで一時停止して食物を子どもに見せると同時に「ハイ、〇〇ですよ」などと声かけをします。この合図をして子どもが口を開けない場合は、スプーンの先で下唇に数回刺激を送ります(チョンチョンと触れます)。子どもが口を開くまでは決して無理に口をこじあけたりするようなことをしてはいけません。また、上唇に刺激すると頭が後方へ反り返ってしまうことがあるので、必ず下唇に刺激を送るようにします。
D.スプーンを口に入れる時
原則としてスプーンはまっすぐに、しかも口の中央部から入れます。特に口唇の閉鎖機能がまだ不十分な子の場合には、スプーンを横向きに使ったり、口に横(口角)の方から挿入するのは避けます。またスプーンを口の中に入れる長さは、ほぼスプーンの2/3が口の中に隠れるようにします。
E.食物を口唇で取りこむとき
ここが訓練のなかで最も大切なところです。ここで基本的に子どもに教えなければならないことは、食物は自分の口唇で“能動的”に取り込むものであり、決して介助者が口の中に食物を放りこんでくれるのを“受身的”に待っていたのではいけないということです。そしてさらに大切なことは、健常者が食物を口に取り込む瞬間というのは、口を閉じる瞬間と一致しているにもかかわらず、障害児に食事を食べさせている光景を見ると、食物を取り込む瞬間は口を開いたままの状態であることがほとんどなのです。この両者の違いをはっきりと区別するとともに、障害児に対する訓練の基本原理はとりもなおさず健常者の食べ方に一歩でも近づける事であることを忘れてはなりません。実際の取り込み方はスプーンを2/3ほど口の中に入れたら、その状態でしばらく子供自身が上唇を下ろすのを待ちます。どうしても力が足りないようだったら、介助者は顎の閉鎖を助けると同時に人差し指で上唇を下に降ろし、スプーン上の食物をこすり取るように真っ直ぐスプーンを引き抜きます。
ここでぜひ注意しなければならないことがあります。それはスプーンを口の中に入れたらすぐに引き抜かずに、そこでしばらく待つということです。その理由は、子供が上唇を下に降ろすための時間を与えることが大切だからです。また、スプーンを入れた途端に介助者が上唇を降ろしてしまうと、子供はいつまでたっても“受身”の状態から抜けられなくなります。
また、スプーンを上の前歯にこすりつけながら引き抜いている光景をよく見ますが、これも同様の理由からやらないようにします。たとえスプーンを咬んでしまう場合でも、すぐに無理やり引き抜こうとせず、介助者の手をスプーンからいったん離し、子供の緊張がぬけるのを待ちます。スプーンが緩んだら、ゆっくりと口唇をふさぎながら引き抜きます。無理に引き抜こうとするとかえって緊張が強くなるし、時には歯がぐらぐらになってしまうことさえあるので注意が必要です。
F.スプーンを引き抜いた後
スプーンを引き抜いた後は、できるだけ子供の口の動きを邪魔しないように介助は必要最小限にします。しかし必要に応じて、たとえば解除の指を離してしまうと口を開いてしまうような場合には、子供の顎の動きを抑制しない程度に下唇の部分を上に持ち上げます。
[後期段階]
後期段階でスプーンを使う場合は、そしゃくを促すために、スプーンを中央からだけではなく、横のほう(口角)からも入れるようにします。そのとき片方だけではなく、左右交互に入れるようにします。
2.固形食の摂取介助(捕食訓練)
食物を口唇を使って取りこむこと、すなわち捕食が摂食機能訓練のなかで最も重要な訓練です。最初はスプーンを使って食物を取りこむときに口唇が閉じられるように練習します。ここでは、主として全介助で食事させる場合を例にして説明します。
1)スプーンを使った基本的な食べさせ方
初期〜中期段階]

B.スプーンを口に運ぶ時
C.開口の刺激
介助者は必要の無い時にはできるだけ子どもの口や顔から指を離しておきます。子どもにとって、やたらに顔や口の周囲をさわられるのは気持ちの良いものではなく、また子どもの能動的な動きを阻害しやすいからです。
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ここで舌を突出させるタイプへのスプーンの使い方も挙げておきます。ダウン症児の場合には、割とこのタイプが見られるようです。
いわゆる逆嚥下(または乳児様嚥下)といわれるもので、食物を取り込むときなど盛んに舌を前方に突出させるような症例では、まずスプーンの先端の裏を使って舌を口の中に収めてから食物を口に入れる必要があります。決して突出した舌の上に食物をのせてはいけません。舌を突出させるタイプでは、スプーンを口から引き抜いた後も、顎の運動を妨げない範囲で口唇を閉鎖するように介助します。

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[後期段階]
箸ではさんだ食物は口角のところから挿入し、糸切り歯(犬歯)の後ろ(ちょうど小臼歯部あたり)にのせるようにします。これを左右交互に行います。この位置よりも食物を奥に入れすぎたり、また食物を頬側の部分(口腔前庭)に落としたりしないようにします。
[中期段階]
後期段階の場合と違って食物を口の中に入れ込まずに、子供が口唇で取り込める位置(スプーンの場合と同じ位置)に食物をもっていき、スプーンのときと同じように口唇で箸をはさみながら捕らえられるようにします。

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A.子供が食物に興味を示し始めたら、そのチャンスを逃がさない
子供が食物に手を延ばし始めたら、それを禁止してはいけません。少しくらい周囲を汚しても、あまり気にせず遊ばせることが大切です。もちろん、無制限にやらせるというのでは無く、たとえば一定量を食べてそろそろ満腹した頃を見計らって5〜10分くらい自由に遊ばせ、その後さっとかたずけてしまいます。また普段から、食物に興味を持たせるように別にもう一つスプーンを用意して、それを手に持たせたり、食物そのものを握らせたりすることも大切です。
B.スプーン、フォークなどの持ち方、口への運び方を正しく教える。
スプーンの持ち方は親指を必ずスプーンの下に回します。うまく持てない場合は握りの部分にビニールテープやゴム管などを巻いて太くしてあげると持ちやすいでしょう。また、スプーンを口へ運ぶ時にどのように手首や肘を曲げたら良いかを、介助者が手を添えて教えてあげます。
本人だけにスプーンを持たせると、次から次へと食物を口に運び、あっと言う間に食べてしまうような子がいますが、このような場合は食べるときのしつけとして、介助者が子供の手の動きを制御してあげる必要があります。

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そこで、食事中は適宜、口の周囲を拭いてあげる必要があります。しかし、だからといって、ひっきり無しに拭いたのでは子供はおちついて食べることができませんから、やりすぎもいけません。特に口の中に食物が入っていて、口を動かしているときは拭かないようにします。そして、拭くときには口を閉じる方向に向かってタオルを動かすようにします。
以上が実際の食べさせ方の例です。参考になったでしょうか?ダウン症児の場合には、食べられないという例は多くはないと思います。けれどもしっかりと口を閉じて食べるのは余り上手ではないようです、捕食の機能が上達し、噛むことが上手にできるようになることが、発語や表情が豊かになる基礎だと思います。その子がどの段階にいるかをよくわきまえて無理の無い食事を与えてあげて下さい。
3.口周辺の汚れの拭き取り方
食事をしているとだんだん口の周辺が汚れてきますが、そのまま食べさせるのはよくありません。それは、ただ単に子供を不潔な状態に慣れさせてしまうといった理由からだけではありません。摂食訓練では感覚機能を高めることをきわめて重要視しており、外から与えた刺激を正しく受け取るためには、常にその部位をきれいにしておくことが必要なのです。正しい感覚が受け取れなければ、正しい動作を引き出すことはできないのです。

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